モルディブ観光ニュース

マンタとジンベイザメに出会えるモルディブのユニークな場所

By Maldives Traveller
2019年7月31日
マンタとジンベイザメに出会えるモルディブのユニークな場所 の写真

近年、モルディブはダイビングをするには世界でも最高の場所の1つだという評判を獲得してきた。この事はモルディブの90%が海に面しているのを考えれば何も驚くべき事ではなく、水中で見られる海洋生物の多様性は単純に驚異的である。

海の世界に興味を持つダイバーや、水中写真家、海洋生物学者など多くの人々が、水面下の様々なミステリーを解き明かし、その壮大な美しさを享受するためにモルディブに押し寄せている。

モルディブにはユニークな側面や普通では見られない景色でダイバーを引き付けている人気のダイビングスポットが数多くあるが、モルディブには毎年発生するユニークな季節現象を理由にして、ここ数年世界から注目を集めている場所がある。その場所はハニファル・ベイと呼ばれており、海を愛する人々の間で非常に話題の場所になっている理由は、マンタとジンベイザメという世界で最も巨大な2種類のプランクトン捕食者が集まる餌場となっているからである。

観光産業がモルディブにもたらされた1970年代から程なくして、同国政府は観光産業を持続可能なものにしていくためには、最も価値ある地域と生物種を保護する必要性がある事に気が付いた。同国内の人気のダイビングスポットのいくつかを海洋保護区(MPA)に指定する事によって保護の努力がなされている。だが、ハニファル・ベイが海洋保護区に指定されたのは2009年という最近の事である。モルディブのバー環礁(南マーロスマドゥル環礁)のダラバンドゥ島とキハードゥッファル島の間に位置するハニファル・ベイ海洋保護区は、実際にはハニファル島を取り囲む地域まで伸びており、礁周縁の外側の200mの境界を包み込んでいる。

毎年5月から11月までの間、動物性プランクトンと呼ばれる小さな生物が、この地域周辺の海の流体力学的な条件を理由にして大量発生する。この場所に大量のマンタとジンベイザメを引き付けているのが、この動物性プランクトンの大量発生である。なぜなら、動物性プランクトンはこの2種類の巨大生物の大好物。太陰潮がインド洋南西のモンスーンの流れを押す事で、熱帯地方のオキアミや他のプランクトンが吸引効果によって深海から表層へ吸い上げられる。この流れによってオキアミが袋小路に押し込まれ、その場所がハニファル・ベイなのである。オキアミは珊瑚礁の壁を抜け出て外洋に出る事も出来るはずなのだが、日の光を嫌う本能によってラグーンの深部に潜ってしまう事から、そうする事は出来ない。そうしてオキアミはハニファル・ベイの深い窪地の中から抜け出す事ができなくなり、大量のプランクトンが集約される事によって水が不透明になる。これはマンタやジンベイザメなどのプランクトン捕食者にとっては抗いがたい正真正銘のご馳走となる。

このユニークな場所はユネスコが2011年にバー環礁を同組織の生物圏保護区に指定した事で国際的な注目を集めた。この驚異的なハニファル・ベイでの現象では数百匹のマンタで海が覆われる事があり、900㎏におよぶ巨大動物がインド洋オキアミを捕食し、妖精の粉のような煌めく数千匹ものイワシたちが泳ぎ回る様は幻想的で壮大な水中のダンスのようだ。このハニファル・ベイのユニークな環境によってマンタは通常の捕食戦略を発展させ、この地域の狭い環境に適したものを開発した。ハニファル・ベイのマンタによって行われているのが確認されたこの捕食戦略は未だかつて世界中のどの地域でも観察された事の無いものだ。ハニファル・ベイで観察された新戦略の1つは「サイクロン・フィーディング」と呼ばれており、そこでは50匹以上のマンタが列をなして捕食行動をし、列の先頭が最後尾に追いつく事で輪を形成ながら回転し、渦巻きを生み出す。100匹以上のマンタが回転すると、この輪が崩壊し捕食する様は混沌とした様相を呈する。マンタたちがそこかしこで衝突するほど混沌としているが、その混沌の中に12mの貨物コンテナほどの大きさのあるジンベイザメと呼ばれる美しいゆったりとした巨大生物が姿を現す。ご想像の通り、こういった狂騒的な捕食行動は長くは続かず、プランクトンが大量に捕食されてしまうので長くても1時間ほどしか持続しない。だが、これはダイバーやシュノーケリングをする人々などの多くの海洋愛好家をモルディブに引き付けやまない驚きに満ちたひと時を体験できるチャンスなのだ。

マンタやジンベイザメと一緒に泳ぐだけでも素晴らしい体験だが、混沌とした水中で一緒にダンスするように捕食行動をするこの驚異的な2種類の巨大生物たちを目の当たりにする事はどんなダイバーにとっても決して見逃せない出来事である。